2008-08

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タイミング

いつもすれ違うばかりの恋だったから、片思いの時間ばかりが長い恋だったから、
だから叶わないはずの恋が叶った時、素直に信じられなかった。
でも、もう逃がしたくない

タイミング (新書館ディアプラス文庫 188)タイミング (新書館ディアプラス文庫 188)
(2008/05/10)
新堂 奈槻

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色恋沙汰には、確かにタイミングは重要で。
本当は両思いでも、タイミングを外したがために一生交わらないこともあるし、素晴らしすぎるタイミングで、本当は交わらないはずの二人が運命共同体になることもあると思う。
だけど、どれほどタイミングが悪くても、叶う運命の恋ならいつかは叶うんじゃないのかな…。
イヤ、もしかしたら只の希望的観測かもしれないけど、そうあって欲しいと思ってます。

……のっけから何の話?って感じですが、誌名にもなっている“タイミング”、もう少しひねった題の付け方もあるんじゃないの?と思う方も多分多いと思うのですが、今回はこのストレートさが結構ツボでした。私的に。

何事にも熱くならない高野が初めて執着したのは、高校の入学式の日に自分にだけ花をつけてくれなかった先輩の黒川。面倒見が良くて、困っている相手を見たら誰でも助ける男前。
何事にも熱くならないどころか、自分の感情にさえ鈍い高野が自分の気持ちに気が付いたのは、黒川が卒業して一年以上経ってから。それも、断る理由が無くて付き合いだした他の男・桜井に抱かれている最中に、その相手の手が黒川に似ていたから。
そうして自分の気持ちを自覚した高野は、何故かそこだけはタイミング良く、夏休みに見学に行った大学で黒川と偶然再会します。でも、その時黒川はまだ、高校時代からの彼女と遠恋中で。
黒川の口からそれを確かめた高野は、丁度連絡をくれた桜井と再び付き合うことにします。
でも、その直後、高野が大学に進学して上京したことで再会した黒川から、彼が高校時代の彼女と別れたことを知らされます。
でも、次に高野が桜井と別れた時には、黒川にはすでに彼氏ができていて。
タイミングの悪さを嘆きながら、黒川を諦めることを諦め、自然体で居ることを決心した高野でしたが、今度は家庭教師先の生徒・笠原政臣から執拗に攻められ、家庭教師を辞めて逃げ出してなおストーカーまがいの攻撃を受けることになります。そして、それはエスカレートし、最初はアパートの小火、と言うより放火にあい、次には命さえ脅かすような事態が起きて──。
幸いにも黒川にその危機を助けられた高野ですが、その件に関して笠原親子の訪問を受けた際、偶然にも黒川に自分の気持ちを知られてしまい、結局、黒川から逃げ出します。
逃げ続ける高野を、黒川は元恋人を使ってやっとキャッチし、そして、告白するのですが──。

粗筋を書きながら、「タイミングも悪いけど、この二人ってそれ以前に鈍すぎる」と初めて気が付きました。(…この時点で私が一番鈍いッてことですね、、、トホホホホ)
気を取り直して。
──特に黒川。鈍いにも程があります。普通、ほとんど接点の無かった後輩と、それも何が共通するわけでもない只の後輩と、そうそう会ったりメールしあったりするものでしょうか?
自分がそれを許している時点で、相手は自分にとって、どういう類かは別にして特別ってことじゃないかと。
そんな相手に対して、他の誰かがちょっかいを出した時にムカムカする理由なんて、一つしか思い当たらない気がするんだけど。
とは言え、実は読んでいる最中は全然そんなこと考えてませんでした。
ストーリーを追ってみると、結構、ドラマチック仕立てな感じがするんですが、実際には所々に入っているツッコミのせいか、語り口がさらりと軽いタッチなせいか、読みながらクスッと笑える部分も多くて、なんだかセツナイと言うよりは、どこか優しい気持ちのまま読み終わってしまったからです。
これは、作者である新堂さんの個性のせいでしょうか?
だとしたら、多分、新堂さんはユーモアのある優しい方なんだろうなと思います。

しかし、笠原。
多分、笠原の事件がなくても、いつかは黒川も自分の気持ちに気が付いたと思うし、その時高野がフリーだったらやっぱり二人は付き合うようになったかもしれない。いつもタイミングを逃がしていた二人だけど、でも、その関係が完全に切れないようなタイミングは持っていたのだから、何らかの縁はあったはずだし。
けれど、この話の中で唯一ダークカラーを放っていた笠原は、この先どうなるのかな?
長い間傍に居てくれたのは、自分を好きになってくれたからだと勘違いして、好きになって欲しいのに、素直に告白することもできず、金の力や暴力、脅しに頼ることしかできなくて。
振り向いてほしさに放火まがいのことまでした彼は、自分がしでかしたことが悪いことだと、いつか理解できる日が来るのだろうか?
考えると、違った意味で胸が痛い。そして、ちょっと怖い。
……以前は、こんな奴いないよ、と笑えた笠原みたいな奴が、本当は結構ゴロゴロしていることに気が付いたから。
こんな相手にだけは、タイミング良く(悪く)会いたくない!、と心から祈る日々だったりする。
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